【今週のお題】思い出のアールグレイ
今週のお題「好きなお茶」、見た途端にちょっと寂しくなってしまいました。
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少し前、よく覗いていた菓子屋(パティスリー)が閉店した。同じ場所に半年ほどたった去年、建物を利用してパン屋が営業を開始したのだが、舗装などに、実はそのパティスリーの名前が微妙に残っている。入り口付近なので、気づいたときにぐっと胸が締め付けられた。
パティスリーは20年くらい営業していた。クッキーの値段がちょっと高いが、そのぶん一袋にたくさん入っていて、他に商品の違いが大きく、それより先にあった別のパティスリーとはかなり差別化がなされていた。何より、喫茶スペースの有無が大きく違った。
ケーキを注文すると、ふちにかわいく店名が入ったお皿にケーキとフルーツが品よく飾られて出てくる。尾張圏なので喫茶店はたくさんあるが、お上品な店でないと手作りでもない限り基本的にフルーツなんか乗ってないし横のビニールが付いたままという経験しかなかったので、すごく輝いて見えた。
お茶はいつもアールグレイにしていた。ダージリンは苦いというか、渋く感じるからだ。胃腸を悪くした時期と、パニック障害の治療を始めたあとはカフェインを普段は避けているので余計に苦く感じるようになってしまったし。
口がとても広くて高さが3センチくらいしかないカップは、とにかく香りを引き立ててくれる。何かの時に尋ねたら、オーナーがこだわって特注したらしい。
居心地がよく、でも近所の家族連れなども多く利用するし午前中はお年寄りが集まっているよくあるモーニング風景もあるし、午後には初々しい学生カップルや落ち着いた大人の夫婦が有線のジャズに包まれている。午前中とクリスマス前後だけ避ければ確実に裏切られない、そんな店だった。
あの特注のカップがほんとうに憧れだった。どんなに上手に淹れても、あんなにふんわりとした香りにはならなかった。兄弟が買ったゲームソフトの限定品のカップが一番、カップの口が広くて香りが近かった。
味も、香りのぶんなのか、店の雰囲気補正なのか、どことなく、自分で入れるよりもまろやかで、軽くて、甘く感じた。
生活を立て直して、もっと口が広いカップに出会えたら、もう一度アールグレイを葉っぱで淹れてみようと思う。
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メルカリのサービス開始が、カップを割ってしまった前年なので当時スマホがあって存在を知っていれば入手できたかもしれないですね。ちなみに検索したら何件か出品されていました。分かる人は覗いてみてください。